国会の権能と議院の権能はしっかりと区別をして覚えておきましょう。

議院は議員と発音が同じなので、学習の際は、議院のことを「ハウス」議員のことを「メンバー」と呼ぶことが多く、当塾でもその名称を使用します。両ハウスが集まって1つの国会となります。

権能とはあまり聞かない言葉ですが簡単に言うと「できること」です。

国会の権能とは「国会でできること」、ハウスの権能とは「ハウスでできること」です。

例えば、内閣総理大臣の指名は国会の権能とされていますので、国会が内閣総理大臣を指名します。ハウスのみ(参議院のみ、衆議院のみ)では内閣総理大臣を指名することはできません。

指名が異なった場合は、衆議院の優越が適用されますが、衆議院の優越は国会の決議になるので、あくまでも国会から指名されたことになります。

衆議院と参議院の2つのハウスが集まって国会になります。つまり国会の権能とハウスの権能を比べると、国会の権能の方が公平中立性が高いと言えます。2つのハウスでまとまって1つの結論を出すのが好ましいですね。ですので、国会の権能の方が強く、原則であるとイメージしておいてください。

国会の権能の方が原則ですが、ハウスの権能から覚えると楽です。

まずは国会の権能から見ていきましょう。

内閣総理大臣の指名権(6条、67条)

法律制定権(59条)

弾劾裁判所設置権(64条)

憲法改正発議権(96条)

どれも重要なものであるので、公平性の強い国会の権能とされています。

つづいて、ハウスの権能です。

議員の逮捕許諾権、釈放要求権(50条)

議員の資格争訟の裁判権(55条)

役員選任権、議員規則制定権、議員懲罰権(58条)

国政調査権(62条)

それぞれ解説をしていきます。

議員の逮捕許諾権、釈放要求権(50条)、役員選任権、議員規則制定権、議員懲罰権(58条)

議員の逮捕許諾権、釈放要求権(50条)、役員選任権、議員規則制定権、議員懲罰権(58条)についてはハウスのルール、ハウス内での問題ですので、ハウスの権能とされているのは当然です。ハウスの役員を決めるのにわざわざ国会で決議する必要はありません。

議員の資格争訟の裁判権(55条)と弾劾裁判所設置権(64条)

議員の資格争訟の裁判権(55条)は要注意です。

議員の資格争訟の裁判権(55条)はハウスの権能弾劾裁判所設置権(64条)は国会の権能です。対比して覚えておきましょう。

弾劾裁判とは裁判官を罷免(クビ)にする裁判です。

裁判官は、

職務上の義務に著しく違反し、または、職務を甚だしく怠ったとき
裁判官としての威信を著しく失うべき非行があったとき

に罷免されます。しかし、「威厳を失う」や「非行」とはどのくらいのレベルの非行から罷免されるのかが非常に曖昧です。世論や現在の倫理観によって「非行」の解釈は変わってくるため、明確な基準が法律にはないのです。

曖昧であるがゆえに国会の権能とされています。「どこからが非行」なのか、は両ハウスが集まって国会として1つの結論を出そうということです。

資格争訟の裁判は弾劾裁判と似ていますが、議員(メンバー)の議席を失わせる(クビ)にする裁判です。こいつは嫌いだからクビ、と言うようなことはできません。議員の資格があるか確認し、資格がなかったらクビになります。

議員になる資格とは大きく分けて3つあります。

1、 年齢要件を満たしていること(衆議院25歳、参議院30歳。)

2、 日本国籍であること

3、 兼職でないこと(たとえば衆議院議員と参議院議員には同時になれません。)

以上の資格を満たしていなければ、議員ではなくなります(クビになる)。弾劾裁判と違って、どれも明確な基準がありますね。1や2は住民票1つですぐに判断できます。3は名簿でも見れば一発です。

明確な基準があり、住民票を確認するだけの簡単な裁判ですので、わざわざ国会で集まる必要もなく、ハウス単独で結論が出せるので、ハウスの権能とされています。

議員の資格があるかないかは、立候補の段階でばれるので、まだ一度も資格争訟の裁判は行われていません(笑)

資格争訟の裁判と弾劾裁判の違いはしっかりと中身を理解して覚えておきましょう。

国政調査権(62条)

調査権(62条)は国調査ではありません。アンケートを取って、統計調査をするのは国勢調査です。

国政調査とは、新しい法律を作る際にどんな法律にしたらいいのかを調べることだと思ってください。

法律案の議決はそれぞれのハウスで行います。衆議院では賛成、参議院では反対などよく聞きますね。それぞれのハウスで票を取る以上、国政調査権はハウスの権能とされています。

国政調査権と「国」がついているので勘違いしやすく、よく試験でも狙われます。調査するだけだからハウス単独でもできると覚えてもよいでしょう。

中身を理解できれば暗記は必要ありません!

日々学習して合格を勝ち取りましょう!

忙しい受験生は下だけでもいいから覚えよう!

国政調査権はハウス(議院)の権能!

弾劾裁判は基準があいまいだから国会で集まって1つの答えを出す!

資格争訟の裁判は明確だから1つのハウスでできる!